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AWS Cost Explorerとは?クラウドコストの状況分析と最適化の方法を解説

AWSパートナーコスト削減・最適化基礎知識

AWSの利用料を分析・予測し、予算管理を強化する方法

従量課金制というAWSの料金体系は、コスト予測や予算管理を難しくする側面がある一方、構成や利用形態の見直しによって費用を削減できる柔軟性も兼ね備えています。

見直しの際に重要となるのが、こまめなモニタリングと分析です。AWSには「AWS Billing and Cost Management」という、請求の設定、コスト分析・計画、コストの最適化に役立つ一連の機能が用意されています。

このAWS Billing and Cost Managementの中に、詳細なコスト把握を可能とする「AWS Cost Explorer」があります。AWS Cost Explorerを用いると、AWSコストの削減や、将来の費用予測といった予算管理強化が可能です。

本記事では、AWS Cost Explorerのメリットや使用方法、有用なユースケースを解説します。

1.AWS Cost Explorerの概要

AWS Cost Explorerとは、使いやすいインターフェイスを通じてAWSのコスト使用量の状況を可視化・分析し、コストの最適化に活用できるAWS標準のツールです。

AWS Cost Explorerの主な機能と特徴

AWS Cost Explorerを用いると、過去のコストと利用状況のデータをグラフや表形式で確認し、サービス別、リージョン別、ユーザー設定のタグ別など、さまざまな切り口でコストを詳細に把握・分析できます。

コストデータは最大14か月の履歴データを保持しており、月次や日次の詳細度で表示可能です。また、過去実績をもとに将来のコストを予測する機能も備えています。

これらは設定変更なしにデフォルトで利用できますが、簡単な設定を行うことで、さらに以下の機能が拡張されます。

  • 過去データ保持の延長(月単位で最大38か月まで)
  • ユーザー独自の分析設定を反映したカスタムレポートの作成
  • 部門やプロジェクトなどのグループ単位でのコスト配分可視化
  • リザーブドインスタンス(RI)、Savings Plans(SP)の効果分析
  • AWS Budgetsとの連携による、予算超過アラートの設定

AWS Cost Explorerの料金体系

AWS Cost Explorerは基本的に無料で利用可能です。ただし、以下の特殊な利用方法の場合には利用料が発生します。

  • プログラムによる自動化などのためにAPIを利用する場合:1リクエストにつき 0.01USD
  • 14日間さかのぼった1時間単位のデータ細分化を行う場合:1か月あたりの使用レコード1,000件につき0.01USD

※参考:AWS Cost Explorer の料金

AWS全体の料金構造やコストの仕組みを知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

2.AWS Cost Explorerがもたらすメリット

AWS Cost Explorerの大きなメリットは、他システムや分析ツールを別途導入することなく、基本機能だけで高度な分析ができる点です。わかりやすいグラフやレポートによる可視化、過去データをもとにした予算予測、コスト削減のサポートを、すべて無料で利用できます。

コストの可視化

通常、AWSからの請求書はサービス別にまとめられています。しかし、ユーザー設定のタグを活用することで、請求データを組織の構造(部門やプロジェクト)に合わせて再編成可能です。これにより、組織内のコスト配分の透明性を確保できます。

フィルタリングやグループ化により、コストや使用量データを深く掘り下げた独自のレポートを作成することも可能です。これらの有用なレポートを共有すれば、チームや組織全体でのコスト認識を高められます。

月単位で過去3年、日単位で過去1年のコスト状況を確認できるため、前年の繁忙期やイベント時期のAWS利用状況を比較し、事業計画に活かせます。

予算管理の強化

過去の利用状況に基づいた今後12か月のコスト予測を確認できるため、データの裏付けがある予算見積りが可能です。これは、より高精度なコスト計画や予算超過リスクの低減に役立ち、予期せぬ高額請求を回避してコストの不確実性を排除することにつながります。

図版:AWS Cost Explorerのコスト予測

2025年5月に提供が始まった新機能「期間比較」を用いると、選択した2か月間におけるコスト変動の概要、変動要因の上位項目、サービス別のコスト比較グラフなどを短時間で把握できます。コスト増がビジネスの成長によるものか、非効率なリソース利用によるものかなどをデータから読み解き、経営判断に活かせるでしょう。

コストの最適化

最もコストがかかっているサービスや、コスト増加要因の特定が容易となります。コスト削減のインパクトが大きい箇所に人員と作業時間を集中させることで、リソース投下の最適化と効率化を実現可能です。

リザーブドインスタンス(RI)やSavings Plans(SP)の利用による潜在的なコスト削減額の推定が可能で、コスト効率化のための具体的なアクションにつなげられます。

AWS Cost Explorerが提供するデータと推奨事項に基づき、「分析→実行→検証」の継続的な最適化サイクルを組織内に組み込むことは、長期的な競争優位性の維持にも役立ちます。

3.AWS Cost Explorerの使用方法

AWS Cost Explorerの開始手順と基本的な操作方法を解説します。

AWS Cost Explorerの開始手順

以下の手順でAWS Cost Explorerを有効化します。

  • 「AWSマネジメントコンソール」にサインインする。
  • 「請求とコスト管理 (Billing and Cost Management)」サービスに移動し、「Cost Explorer」を選択する。
  • 「Cost Explorer へようこそ」画面で「Cost Explorer の起動」をクリックする。

有効化後、コストと利用状況のデータ収集が開始されます。データがAWS Cost Explorer上に反映されるまでには、少なくとも24時間が必要です。

IAMユーザーを使用する場合は以下の手順で権限付与が必要です。

  • 「AWSマネジメントコンソール」の「請求情報への IAM ユーザーとロールのアクセス」でIAMアクセスをアクティブ化する。
  • IAMユーザーにAWS Cost Explorer操作の権限を付与する。
    例:ce:GetCostAndUsageComparisons:コストと使用状況の比較を取得するアクセス許可

※参考:AWS コスト管理にアイデンティティベースのポリシー (IAM ポリシー) を使用する

AWS Cost Explorerの基本的な操作方法

例として「月別・サービス別のコストを、積み上げ棒グラフで表示する」という操作を解説します。解説は、有効化が完了したあとのAWS Cost Explorerデフォルト状態から進めます。

まず、コストを分析するためのレポート設定を行います。

  • 左側のナビゲーションで「Cost Explorer」をクリックする。

次に、期間と粒度を設定します。

  • 画面右上の「日付範囲」設定で、「過去6か月間」など分析したい期間を設定する。
  • 「日付範囲」設定の下にある「粒度」設定で「月別」を選択する。

サービス別のコストを見るためにグループ化の設定を行います。

  • 「粒度」設定の下にある「グループ化の条件」「ディメンション」のドロップダウンメニューを開く。
  • ドロップダウンリストから「サービス」を選択する。

ここまでの操作で、月別グラフのデータがAWSサービス(例:Amazon EC2、Amazon S3、AWS Lambdaなど)ごとに分類されます。

最後に、グラフの上部にあるグラフのアイコンが「積み上げ棒グラフ」になっていることを確認してください。

これで、月別の合計コストが、各AWSサービス別に積み上げられた状態で視覚化されます。設定したレポートは「レポートライブラリに保存」ボタンからカスタムレポートとして保存でき、次回以降すぐに同じ分析結果を確認できます。

4.AWS Cost Explorerのユースケース

AWS Cost Explorerを用いた、コスト削減や予算管理強化に役立つユースケースを紹介します。

部門毎のコスト把握

ユーザーで定義する「コスト配分タグ」(例: `Project: A`、`Environment: Dev`)を事前にリソースへ設定しておくと、AWS Cost Explorerでコストをグループ化して表示できます。

これを活用し、各部門やプロジェクトがどれだけのコストを消費しているかを正確に把握することで、ITコストのチャージバックへの活用や、コストを各部門長に意識させるような組織的アクションへとつなげられます。

「コスト配分タグ」のほかに、AWSアカウントやサービスなど、さまざまな条件に基づいてグルーピングできる「コストカテゴリ」という仕組みもあります。これを用いると、複数の部門やプロジェクトからなるビジネス組織とコストのマッピングを行うことが可能です。

予算計画・費用予測

AWS Cost Explorerの予測機能(最大12か月先まで)を使用し、現在の利用傾向に基づいた将来のコスト推定値を確認することが可能です。

例えば、予測コストが現在の予算を上回りそうな場合でも、早期発見により対策を講じる時間的余裕が生まれます。コスト可視化により予算超過の要因を特定し、リソースの停止、サイズ変更、Savings Plans(SP)の購入などの対策を講じることで、予測コストを予算内に収めるための軌道修正を行えます。

異常検知と最適化判断

ここでは、急なコスト増加の原因究明、コストの無駄の発見、コストの最適化について解説します。

急なコスト増加の原因究明プロセス

まず、コスト増加が発生したと思われる時期に合わせてAWS Cost Explorerで表示するデータの日付範囲を指定し、日別または時間別のコストグラフを確認します。

次に、コストが急増した日を絞り込み、サービス別やリージョン別、さらにリソースタグ別にドリルダウンして分析することで、どのサービス(例: EC2、RDS、S3)で何が起こったのかを特定できます。

コストの無駄の発見プロセス

サービス別コストレポートを用いて、特定のサービスのコストを定期的にチェックしましょう。特にストレージコスト(EBSやS3)やアイドル状態のデータベース(RDS)についての利用状況とコストを照合することで、不要なリソースの削除やライフサイクルポリシーの適用につなげられます。

コストの最適化プロセス

コスト低減に大きな効果が期待できるのが、AWS Cost Explorerのリザーブドインスタンス(RI)やSavings Plans(SP)の推奨事項レポートです。

同レポートには、過去の安定的な利用状況に基づいて推奨されるRIやSPの種類、推定節約額が提示されます。さらに、コミットメント期間や支払いオプションの設定を変更すると、その条件に合う推奨内容を再提示してくれます。

このレポートを意思決定支援情報として活かし、RI/SP購入の判断を行いましょう。RIは各サービス画面あるいはAWS Billing画面にて、SPはレポートから実際の購入手続きへ進めます。

ただし、こうした分析・判断・最適化のプロセスは多岐にわたります。継続的に改善するには、社内のリソースや専門知識が求められるでしょう。限られた体制で効率的に運用するためには、外部支援の活用も有効な選択肢になります。

5.まとめ

AWS Cost ExplorerはAWSコストを可視化して分析できる便利なツールですが、継続的な最適化を運用レベルで管理するには、専門的な知見と時間が必要です。

ハートビーツの「AWS請求代行サービス」と「アシストプラス for AWS」を利用すれば、コストがかかっている箇所の特定から最適化までを包括的に任せられます。AWS Cost Explorerのようにコストの可視化が可能な専用管理画面「WavePro」でコストをいつでも確認できるほか、「アシストプラス for AWS」を組み合わせることで、RI/SPの最適化提案や定例会での運用支援など、コストを「どう抑えるか」までをワンストップで支援します。

コストの最適化を確実に進めたい企業様は、ぜひハートビーツへご相談ください。

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