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「研修開発入門」という本を読んで勉強してみた

   

こんにちは。事業基盤グループ 人材開発チームの倉持です。

今までに新入社員向けの研修を開発することが何回かあったのですが、感覚で行っていた部分が大きかったため、社内全体の研修をするうえであらためて研修開発の基本を学び直そうと思い、「研修開発入門」という本を読んでみました。

※今回の参考文献

※注意。本ブログでは参考文献を要約としてまとめたものではなく、本を読んだうえで我々にとって必要と感じた部分を引用する形としています。参考文献について興味を持たれた方はぜひ直接原著を読んでみてください。

研修開発のプロセス

本書では、研修開発とは「研修を考え、学習者に届け、効果を生み出すまでのプロセス」と書かれており、具体的には下記のようなプロセスとなっています。

  1. 研修企画
  2. 研修デザイン
  3. 研修講師選定
  4. 研修広報
  5. 研修準備
  6. 研修実施
  7. 研修フォローとレポーティング

今回は、私自身の経験が浅い「研修企画」「研修デザイン」に焦点を当てて、印象に残った部分について触れていきます。

研修企画

経営や現場のニーズに合致した研修企画を行うためには、下記の4つのポイントを実行していく必要があるとのことです。

  1. ニーズの探索
  2. 人材マネジメント施策の検討
  3. 学習者の分析
  4. 経営陣と現場トップのステークホルダー化

「ニーズの探索」では、経営陣や現場とコミュニケーションを取りどういったニーズがあるのかを探索します。ここで注意することは、ヒアリングしたニーズが個人の思い込みである可能性もあるということです。そのため、経営陣や現場のマネージャーの声に真摯にかつ、積極的に耳を傾けつつも何が真の問題であるかを検証することが大切であると書かれていました。また、新しいニーズを追加するだけでなく、ニーズが失われたものをやめることも必要とのことです。弊社の研修も定期的に見直しを行っていますがそれでも遅いと感じることはあるので、より短いスパンで最新のニーズを探索することが大切だと感じました。

「人材マネジメント施策の検討」では、抽出された問題を「採用」「人材育成」「配置」「処遇」などのさまざまな人事マネジメント施策の、どの手段で解決するのが最適かを考えていきます。研修開発のプロフェッショナルとは「研修でこそ解決できるもの」を選択的に選び取り研修に落とし込むこと、あるいは研修と他の人材マネジメント施策とを組み合わせて解決できる人のことを指すと書かれていました。

「学習者の分析」では、研修対象となる学習者を決定し、プロファイリングしていきます。コスト面や研修後の成果などを考慮して、現場の社員を対象とするのか、その上司であるマネージャーを対象とするのか、といったように研修対象を決めていきます。ただ研修対象となる学習者を決めるだけでなく、その学習者についてよく知ることが重要とのことです。今までの経験や保有している知識やスキル、学習者本人がもっとも知りたいことなどを把握しておくことで、学習者に合わせた研修を行うことができます。

「経営陣と現場トップのステークホルダー化」では、研修の利害関係者に事前の情報提供、提案活動などを行い、後で協力が得られるようにしておきます。

研修のデザイン

研修の目的と行動目標化

研修をデザインする際最初に行うべきことは目的を決めることです。研修の目的とは、「現場で成果につながる行動を取ることができるようにすること」と書かれていました。そのため、「研修で何を獲得しその結果どういった行動ができるようになるのか」という観点で目的を決めることが大切です。さらに、その目的を細分化し、現場でどのような行動を取ることができれば良いかを具体的にリスト化(行動目標化)していきます。

評価方法の検討

次に、行動目標それぞれが達成できたかを評価するための方法を検討していきます。この段階で評価方法を検討することで、行動目標の妥当性をチェックできるとのことです。

評価については、下記ブログが参考になりますので併せて読んでいただければと思います。

より効果的な研修を作成するために 〜研修開発における研修評価について勉強してみた〜

学びの原理・原則

研修の目的を決めて行動目標化し評価方法を決めることができたら、実際の研修の内容をデザインしていきます。その際に、今までの長い学習研究によってつくられた「学びの原理・原則」を意識すると良いと書かれています。

目的の原理

大人は「なぜ、研修で学ばなければならないのか(目的)」「この研修を受けるメリットとは何か(メリット)」「この研修は、どんなふうに自分の仕事と関連するのか(業務への関連)」といった「目的」が十分に意識できていないと、安心して学ぶことができないとのことです。

確かに、通常業務がある中で時間を割いて研修に参加するには、目的に納得感がないと研修に参加するモチベーションが上がらないですよね。研修する前に研修の目的やメリットを理解してもらうことが大切だと感じました。

学習者中心の原理

学習内容は、学習者の既存の知識や経験に応じて教えられなければならないとのことです。教える側は「教授者中心」にものを考えがちらしいのですが、もっとも大切なのは「学習者の立場に立ち、学習者の現在の状況に合った学習内容を選択すること」とのことです。そのためにも、研修の企画段階で学習者の分析をしっかり行っておく必要がありそうです。

多様性と螺旋の原理 

大人は子ども以上に飽きやすいらしいです。大人に学びを提供するときには学習目標を見据えたうえで、多種多様な活動を組み合わせ、徐々に低次の活動から高次の活動にステップアップさせ、飽きない工夫をする必要があるようです。例えば、最初は座学で学び、次にグループワークを行い、最後に実践する、のようにステップアップさせていきます。

知識と体験の原理

「概念的な知識を学ぶこと」と「体験や実習すること」のバランスを取りながら、学習を組み立てなければならないという原理のようです。知識だけ積み重ねても実際の行動には結びつかず、体験だけさせても反知識主義に陥ってしまう可能性があるため、「知識」と「体験」のバランスを取ることが大切です。

学習者共同体の原理

人は学ぶときに他者を必要とするとのことです。学習を促す際には、学習者共同体を組織し他者と共に学べるようにする工夫が必要です。学習研究では、基本的に学習というのは他者の中にあると考えられているそうです。そのため、共同体の中で共に学んでいけることや、みんなで価値あるものを探求していくこと、その中で試行錯誤していきながら学ぶ、ということも大切です。

フィードバックと内省の原理

学習した内容は、学習者自ら実践しそれに対して他者からフィードバックを与えられ、内省する機会を設ける必要があるとのことです。そのためには、学習目標を明確に定義し、実践の機会を設け、じっくり内省するための時間をカリキュラム内に確保しておく必要があります。

エンパワーメントの原理

大人の学習には、過去の自分のやり方を否定し新たなものを生み出していくこともあり、混乱や葛藤が生じることもあります。そしてネガティブな感情になることもあります。そういったネガティブな感情をそのままにするのではなく、研修の最後には学習者が立ち上がり、何かを実践していけるように心理的状態をゆるやかにコントロールする必要があるとのことです。最後は学習者を元気付けて(エンパワーメント)現場に帰すということが大切なようです。

最後に

本書を読んで、無意識で行っていたことを実感でき、基本的なことを疎かにしていたことに気づくことができました。また、当たり前に思えるようなことでも、今までの行動を振り返ってみると実践できていないことが多いと感じました。成果につながる行動ができるようになるための研修を行えるように、学んだことを実践していきたいと思います。

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