こんにちは、技術開発チームの滝澤です。
わたしは弊社のブログや資料などの文書に対して技術的観点からの確認を依頼されることがあります。しかし、内容以前に日本語表記の点で気になり、指摘することが多いです。それでは、どのような点に注意して文章を作成すればよいでしょうか。日本語表記についてのガイドラインや参考資料がウェブ上で閲覧できるので、それを利用すればよいです。本記事ではそのガイドラインや参考資料について紹介します。
なお、本記事は社内勉強会で発表した資料に加筆して再構成したものです。
まとめ
結論を先に述べると、日本語表記ガイドラインとしては次の資料が参考になります。
- 公用文作成の考え方(建議)
- JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)
- 外来語(カタカナ)表記ガイドライン第3版
- 書籍『日本語表記ルールブック第2版』日本エディタースクール編
- 書籍『日本語スタイルガイド(第3版)』一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会編著
また、参考資料としては次の資料も役に立ちます。
日本語表記ガイドライン
このセクションでは文章を書く際に参考になる日本語表記についてのガイドラインを紹介します。
公用文作成の考え方
公的なガイドラインとしては文化審議会が建議した『公用文作成の考え方』があります。
これは長い間利用されてきた『公用文作成の要領(昭和27年内閣官房長官依命通知別紙)』を新たに見直したもので、2022年1月に建議されました。
公用文作成のためのガイドラインではありますが、公用文の分類例として法令からSNSまで想定されており、ビジネス文書や企業ブログを書く際にも利用できます。そのため、原則としては『公用文作成の考え方』を参考にして文章を作成するとよいでしょう。特にこの文書の付録である「(付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説」(以降、『公用文作成の考え方』の解説と略す)に具体的な説明があり、文章作成のための良い指針となります。
書かれている内容の雰囲気をつかんでもらうために一部を抜粋します。『公用文作成の考え方』の解説の「I 表記の原則 > 1 漢字の使い方」の一部です。
(3) 常用漢字表に使える漢字があっても仮名で書く場合 書き表そうとする語に使える漢字とその音訓が常用漢字表にある場合には、その漢字を用いて書く のが原則である。ただし、例外として仮名で書くものがある。 ア 仮名で書く 助詞 例)位→くらい(程度) 等→など(例示。「等」は「とう」と読むときに用いる。) 程→ほど(程度) 助動詞 例)〜の様だ→〜のようだ (やむを得)無い→ない 動詞・形容詞などの補助的な用法 例)〜(し)て行く→ていく 〜(し)て頂く→ていただく 〜(し)て下さる→てくださる 〜(し)て来る→てくる 〜(し)て見る→てみる 〜(し)て欲しい→てほしい 〜(し)て良い→てよい (実際の動作・状態等を表す場合は「...街へ行く」「...賞状を頂く」 「...贈物を下さる」「...東から来る」「しっかり見る」「資格が欲しい」 「声が良い」のように漢字を用いる。) 形式名詞 例)事→こと 時→とき 所・処→ところ 物・者→もの (ただし、「事は重大である」「法律の定める年齢に達した時」「家を建てる所」 「所持する物」「裁判所の指名した者」のように、具体的に特定できる対象がある場合 には漢字で書く。) 中・内→うち(「...のうち」等。「内に秘める」などは漢字で書く。) 為→ため 通り→とおり(「通知のとおり...」「思ったとおり」等。「大通り」などは漢字で書く。) 故→ゆえ(「それゆえ...」等。「故あって」などは漢字で書く。) 様→よう(「このような...」等) 訳→わけ(「そうするわけにはいかない」等。「訳あって」などは漢字で書く。)
JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)
民間のガイドラインとしては一般社団法人日本翻訳連盟(JTF)により公開されている『JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)』があります。
『JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)』は外国語から日本語に翻訳する際の日本語表記ガイドラインです。しかし、ビジネス文書や企業ブログを書く際にも利用できます。
書かれている内容の雰囲気をつかんでもらうために一部を抜粋します。 『JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)』の「2.2 文字の表記と使い分け > 2.2.1 ひらがなと漢字の使い分け」の「ひらがなで書く」の表の一部です。
◯ 使用する | ✕ 使用しない | 補足 |
---|---|---|
あらかじめ | 予め | |
いずれ | 何れ | |
いつ | 何時 | |
およそ | 凡そ | |
おもむろに | 徐に | |
かえって | 却って | |
かつ | 且つ | 常用漢字表にあるが、ひらがなを使う |
〜かもしれない | 〜かも知れない | |
〜ください | 〜下さい | (例)提出してください。 |
これほど | これ程 | |
ご〜 | 御〜 | (例)ご覧ください。ご意見。 |
〜(する)こと | 〜(する)事 | 形式名詞。(例)開くことができます。 |
子ども | 子供、こども |
by Japan Translation Federation (CC BY 4.0) 「JTF日本語標準スタイルガイド 第3.0版」(JTF、CC BY 4.0)から抜粋
外来語(カタカナ)表記ガイドライン
外来語の表記に関する民間のガイドラインとしては、一般社団法人テクニカルコミュニケーター協会による『外来語(カタカナ)表記ガイドライン第3版』があります。
外来語の表記に関する公的なガイドラインとしては『外来語の表記(平成3年内閣告示第2号)』があります。しかし、『外来語の表記』では明確ではない部分がたくさんあります。また、「慣用がある場合は、それによる」や「慣用に従う」というような注記もあります。それでは、『外来語の表記』では明確になっていない部分や慣用になっている外来語のカタカナ表記は何かということになります。そこで、一般社団法人テクニカルコミュニケーター協会では外来語のカタカナ表記に関するアンケートを行い、その結果をこのガイドラインに反映しています。
例えば、interfaceは「インターフェース」と「インターフェイス」との表記揺れがあります。『外来語の表記』の原則に従えば「インターフェース」になります。しかし、アンケートの結果を受けて例外として「インターフェイス」を採用しています。
外来語のカタカナ表記に迷ったらこのガイドラインを読むことをお勧めします。
書籍
本記事ではウェブで入手できる情報を紹介するのを目的にしていますが、日本語表記ガイドラインとして利用できる書籍も参考として紹介します。
- 『日本語表記ルールブック第2版』日本エディタースクール編
- 『日本語スタイルガイド(第3版)』一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会編著
『日本語表記ルールブック第2版』は日本エディタースクールが編集・発行しているテキストです。本のタイトルどおり、日本語表記の規則をまとめている書籍になります。
『日本語スタイルガイド(第3版)』は一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会編著のテクニカルライティングのための書籍です。「第2編 日本語スタイルガイド」が日本語表記のガイドラインになっています。 追記:2024年には第4版の出版が予定されています。
この他にも出版社や新聞社・通信社がそれぞれ自社の資料を元にして作成した日本語表記ガイドラインや用字用語集も出版されています。
個人的には『日本語スタイルガイド(第3版)』がテクニカルライティング技術についての説明もありお勧めです。
参考資料
このセクションでは参考となる他の資料を紹介します。
在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン
公的な日本語ガイドラインとして『在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン』という文書があります。
これは2020年に出入国在留管理庁と文化庁により公開されたものです。
表題に「在留支援のため」が含まれているため、ビジネス文書を書くのには関係ないように見えます。しかし、「第2章 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」の「在留支援のためのやさしい日本語の作り方のポイント」には次のような項目が記載されています。
- ステップ1 日本人にわかりやすい文章
- ステップ2 外国人にもわかりやすい文章
- ステップ3 わかりやすさの確認
つまり、分かりやすい文章を書くうえで参考になることが書かれています。第2章は6ページしかありませんので、このガイドラインにも目を通すことをお勧めします。
敬語の指針
敬語に関する公的な指針として『敬語の指針』があります。
これは2007年(平成19年)に文化審議会が答申したものです。
次の章立てで構成されています。
- 第1章 敬語についての考え方
- 第2章 敬語の仕組み
- 第3章 敬語の具体的な使い方
敬語について学び直したいという人は「第2章 敬語の仕組み」を読んでみてください。 また、「第3章 敬語の具体的な使い方」には「させていただく」問題のような興味深い話題も載っています。 わたし自身もそうですが、なんとなく敬語を使っている人はこの指針で敬語を学び直してみるのもよいでしょう。
分かり合うための言語コミュニケーション
言語コミュニケーションに関する公的な資料として『分かり合うための言語コミュニケーション(報告)』があります。
これは2018年(平成30年)に文化審議会国語分科会が報告したものです。
文章というのはたいていは読む人(読者)が存在します。つまり、文章は読者との言語コミュニケーションの手段とも言えます。それでは、読者とより良いコミュニケーションを行うにはどのようにしたらよいでしょうか。その答えの参考になる情報がこの『分かり合うための言語コミュニケーション』にはまとまっています。
ここで内容の一部を簡単に紹介します。この資料では円滑にコミュニケーションを行うために次の4つの要素を示しています。
- 正確さ(互いにとって必要な情報を誤りなくかつ過不足なく伝え合うこと)
- 分かりやすさ(互いが十分に情報を理解できるように、表現を工夫して伝え合うこと)
- ふさわしさ(場面や状況、相手の気持ちに配慮した話題や言葉を選び、適切な手段・媒体を通じて伝え合うこと)
- 敬意と親しさ(伝え合う者同士が近づき過ぎず、遠ざかり過ぎず、互いに心地良い距離をとりながら伝え合うこと)
これらの概要についてパンフレットに簡潔にまとめられているのでパンフレットだけでも読んでみてください。興味が出てきましたら、本編の『分かり合うための言語コミュニケーション』を読んでみてください。この内容を意識して文章を書けるようになったら、読者に分かりやすい文章が書けるようになるはずです。
迷いがちな点についての資料
このセクションでは、どのように表記するかを迷いがちになる点について資料と共に紹介します。
外来語の表記の長音符号(音引き)
外来語の表記として「コンピューター」と「コンピュータ」のような語尾に長音符号(音引き)を付けるべきかどうかを迷うことがあります。
『外来語の表記 留意事項その2(細則的な事項)』に以下の記載があり、原則として長音符号を付けることになっています。
3 長音は,原則として長音符号「ー」を用いて書く。 〔例〕 エネルギー オーバーコート グループ ゲーム ショー テーブル パーティー ウェールズ(地) ポーランド(地) ローマ(地) ゲーテ(人) ニュートン(人) 注1 長音符号の代わりに母音字を添えて書く慣用もある。 〔例〕 バレエ(舞踊) ミイラ 注2 「エー」「オー」と書かず,「エイ」「オウ」と書くような慣用のある場合は,それによる。 〔例〕 エイト ペイント レイアウト スペイン(地) ケインズ(人) サラダボウル ボウリング(球技) 注3 英語の語末の‐er,‐or,‐arなどに当たるものは,原則としてア列の長音とし長音符号「ー」を用いて書き表す。ただし,慣用に応じて「ー」を省くことができる。 〔例〕 エレベーター ギター コンピューター マフラー エレベータ コンピュータ スリッパ
語尾に長音符号を付けない根拠になっていた『JIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法』についてですが、執筆時点(2023年8月)での最新版の『JIS Z 8301:2019 規格票の様式及び作成方法』では「H.6 外来語の表記 外来語の表記は,主として"外来語の表記(平成3.6.28 内閣告示第2号)"による。」と記述されており、上述の『外来語の表記』が参照されているだけなので、原則としては長音符号を付けることになります。
ちなみに、『公用文作成の考え方』の解説の「I 表記の原則 > 3 外来語の表記」には次の記載があります。『外来語の表記』の内容がまとめられています。
エ 長音は、原則として長音符号を使って書く 長音は、長音符号を使って書く。 例)エネルギー オーバーコート グループ ゲーム ショー メール ただし、次のようなものは慣用に従い、長音符号を用いずに書く。 例)バレエ(舞踊) ミイラ エイト ペイント レイアウト サラダボウル 英語の語末の-er、-or、-ar などに当たるものは、ア列の長音とし、長音符号を用いて書くのが原 則である。そのほか、-ty、-ry など、y で終わる語も長音符号を用いて書く。 例)コンピューター(computer) エレベーター(elevator) カレンダー(calendar) コミュニティー(community) カテゴリー(category)
算用数字と漢数字
算用数字と漢数字の使い分けについて迷うことがあります。
『公用文作成の考え方』には次の記載があります。
4 数字を使う際は、次の点に留意する ア 横書きでは、算用数字を使う。 例)令和2年11月26日 午後2時37分 72% 電話:03‐5253‐**** 略 オ 概数は、漢数字を使う。 例)二十余人 数十人 四、五十人 カ 語を構成する数や常用漢字表の訓による数え方などは、漢数字を使う。 例)二者択一 一つ、二つ... 一人、二人... 六法全書 七五三 略
さらに、『公用文作成の考え方』の解説の「I 表記の原則 > 4 数字の使い方」に説明がありますので、そちらが参考になります。
助数詞
「1か月」「1ヵ月」「1ヶ月」のように助数詞に伴う「か」、「ヵ」、「カ」、「ヶ」、「ケ」、「箇」などの表記について迷うことがあります。
『公用文作成の考え方』には次の記載があります。
4 数字を使う際は、次の点に留意する ケ 算用数字を使う横書きでは、「○か所」「○か月」と書く(ただし、漢数字を用いる場合には「○箇所」「○箇月」のように書く。)。 例)3か所 7か月 三箇所 七箇月
原則として「1か月」のようにひらがなの「か」を使います。漢数字を使う場合には「一箇月」のように「箇」を使います。
漢字と仮名
漢字と仮名の使い分けに迷うことがあります。
漢字が多い文章と仮名が多い文章の雰囲気は異なります。漢字の多い文章は硬い雰囲気になり、仮名が多い文章は柔らかい雰囲気になります。例えば早口言葉の「酸桃も桃も桃の類」は少し堅い雰囲気になり、「スモモも桃も桃のるい」は少し柔らかい雰囲気になります。また「すもももももももものるい」のようにすべてが平仮名である文章は読みにいです。そのため、その使い分けを適切に行います。
漢字と仮名の使い分けは『公用文作成の考え方』の解説の「Ⅰ 表記の原則 > 1 漢字の使い方 > (1)漢字使用の原則」にまとまっています。
原則はありますが、最終的には読みやすいかどうかで判断してください。
まとめ
日本語表記ガイドラインとしては次の資料が参考になります。
- 公用文作成の考え方(建議)
- JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)
- 外来語(カタカナ)表記ガイドライン第3版
- 書籍『日本語表記ルールブック第2版』日本エディタースクール編
- 書籍『日本語スタイルガイド(第3版)』一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会編著
また、参考資料としては次の資料も役に立ちます。
日本語表記ガイドラインはあくまでも日本語の表記や用字用語についてのガイドラインにしか過ぎません。そのため、より分かりやすい文章を書きたい人は、さらに日本語の作文技術に関する書籍を読むとよいでしょう。個人的には次の書籍がお勧めです。
- 書籍『中学生からの作文技術』本多勝一著
- 書籍『数学文章作法 基礎編』『数学文章作法 推敲編』結城浩著
付録として次のものを載せました。興味がありましたら読んでみてください。
- ブログの確認でよく指摘する点
付録:ブログの確認でよく指摘する点
企業ブログの確認をしていて、日本語表記の観点から指摘することが多いのものを紹介します。
漢字と仮名の使い分け
日本語入力ソフトウェアで漢字を簡単に入力できてしまうためか、漢字を多く使う傾向にあります。ビジネス文書では漢字を多く使うものだと思い込んでいると感じることさえあります。
特に指摘することが多いのが以下の品詞です。漢字を平仮名に直してもらっています。
- 形式名詞(〜する事、〜する時、〜の通り)
- 補助動詞(〜て頂く、〜て下さい、〜致す)
- 補助形容詞(〜て欲しい、〜て良い)
- その他(〜出来る)
漢字と仮名の使い分けについては「漢字と仮名」で上述しました。詳細は『公用文作成の考え方』の解説の「Ⅰ 表記の原則 > 1 漢字の使い方 > (1)漢字使用の原則 」を読んでください。
敬語表現
弊社のブログは敬体(ですます調)・丁寧語で書くのを基本としています。しかし、尊敬語や謙譲語が使われていることがあります。ブログでは敬意を表す対象者は不特定の読者であり、具体的な対象者がいないため、尊敬語や謙譲語が使われると不必要に堅苦しい文章になります。さらに、これらの尊敬語や謙譲語が意図して書かれているのではなく、ほとんどが日常業務におけるお客様向けの連絡文章の手癖(いわゆる「させていただく症候群」のような敬語表現)で書かれているだけです。そのため、尊敬語や謙譲語はできるだけ避けるように修正してもらいます。例えば「このブログでは○○をご紹介させていただきます」を「このブログでは○○を紹介します」のように修正してもらいます。なお、具体的な敬意を表す対象者がいるときには尊敬語や謙譲語の利用は差し支えありません。
また、「いたします」や「おります」のような丁重語を使うのは差し支えありません。先の例では「このブログでは○○を紹介いたします」になります。しかし、改まった文章になり、堅苦しさを感じます。そのため、文章の内容によっては丁重語を指摘して直してもらうこともあります。
『公用文作成の考え方』の解説の「II 用語の使い方 > 6 文書の目的、媒体に応じた言葉の使い方」に次の記載があります。上述したようなことがまとまっています。敬意表現を使う際の参考にしてください。
ウ 敬語など相手や場面に応じた気遣いの表現を適切に使う 広く一般の人に向けた解説・広報等の場合、適切な敬語などの待遇表現(相手や場面に応じた気遣いの表現)も必要になってくる。程度の高い敬語を使えばよいというものではない。文書の公的な性格は変わらないので、分かりやすく正確に情報を伝えるという観点から、過剰な表現は避ける。「御利用たまわる際には」などとはせず「利用される際には」とするなど、助動詞「(ら)れる」を用いる程度の言い方を標準としたい。 丁寧さを出したいときにも、文末は「です・ます」を基調とし、「ございます」は用いない。「申します」「参ります」も読み手に配慮する特別な場合を除いては使わない。また、「おります」「いたします」などは必要に応じて使うが多用しない。情報を簡潔に伝えるときは、「である・だ」も使用する。
参考資料として紹介済みですが、『敬語の指針』も敬語の学び直しに活用してください。
回りくどい表現
「〜(する)ことができる」のような回りくどい表現がよく使われており、簡潔になるように直してもらっています。
「〜(する)ことができる」や「〜(する)ことが可能である」は「〜できる」あるいは動詞の可能形に直します。ただし、助動詞「れる」や「られる」には可能の他に自発・受け身・尊敬の意味もあるため、文脈において誤解される恐れがあるときには使いません。
- 設定することができる → 設定できる(サ変動詞+できる)
- 書くことができる → 書ける(動詞の可能形)
- 食べることができる → 食べることができる/食べられる ※「食べられる」は文脈によっては自発・受け身・尊敬と誤解される恐れがある
「〜を行う」、「〜を実行する」、「〜を実施する」は「〜」がサ変動詞にできるときには「〜する」に直します。
- 確認を行う → 確認する
弱い表現
「〜だと思います」(判断)、「〜うと思います」(意思)、「〜たいと思います」(希望)のように表現を弱める目的で「思う」が使われていることがあります。これは日常会話においては断定を避けて円滑にコミュニケーションを進めるためによく使われます。しかし、ブログのような媒体では表現を弱める必要はないため、このような「思う」を使わないように直してもらっています。
例えば、事実であることに対して「〜だと思います」(判断)は不確かな情報に感じてしまいます。これは「〜です」に直してもらいます。「〜うと思います」(意思)や「〜たいと思います」(希望)は弱い決意や希望に感じられます。これらは「〜します」と言い切るように直してもらいます。
事実ではなく不確かな情報の場合や本当に弱い意思や希望の場合には「思う」を使ってもよいのでしょうか。「思う」を使うこと自体は間違いではありません。しかし、企業ブログにはそもそもそのような情報を書くべきではありません。例えば「明日から頑張ろうと思います」という文があったときに、この人はやる気があるのかよく分からないと思う読者もいるでしょう。
分かりにくい文章
分かりにくい文章の特徴として、次のようなものがあります。
- 説明に過不足がある。
- 説明の材料が適切に選択されていない。重要なポイントが落ちている。不必要な説明がある。
- 読者層に適していない用語が使われている。
- 段落や区切りが不適切である。
- 主題と述語の関係が乱れている。
- 文が長くて、文の構造が分かりにくく、意味がすぐに読み取れない。主語と述語が離れている。
- 表現があいまいである。
- 修飾に乱れがあり、修飾の意味がとりにくい。修飾語が複数あるときに複数の意味にとれてしまう。
- 指示語があいまいである。
- 句読点や括弧が適切ではない。
書き慣れていない人の文章を確認するときには実によく見かけます。このようなときには、分かりにくいことを伝えたり、修正例を提示したりして直してもらいます。
ちなみに、ここにあげた項目は書籍『日本語表記ルールブック第2版』の「2 文体について > 1 正確・簡潔に、わかりやすくする > *分かりやすい文章」の項目の内容を逆にしたものです。
なお、分かりやすい文章を書くためのきっかけの書籍としては『中学生からの作文技術』(本多勝一著)が個人的にはお勧めです。
付録は以上となります。